Defiのバックボーン 日本精機の技術 ―有機ELディスプレイ 2005/3/21
有機ELディスプレイ。最近ではテレビ番組などで紹介されるのを見かけるようになったのでご存知の方が多いと思います。有機ELディスプレイを一言で説明すると、「表示器の一種で、表示が非常に綺麗で見やすい次世代ディスプレイ」です。
その特長は、「自発光であるため、高輝度・コントラスト・広い視野角を実現し、応答速度にも優れているということ。しかも、消費電力が低く、薄型、軽量であり、車載用や携帯情報端末用など、中・小型で鮮明な表示が必要とされる分野での応用に適している」ことです。
表示器と言えば、電卓に始まり携帯画面・家電の操作パネル・オーディオ・PCモニター・テレビなど、生活のあらゆる面で目にします。
表示器には
- 液晶 (LCD)
- 蛍光表示管 (VFD)
- プラズマ (PDP)
- ブラウン管 (CRT)
- 発光ダイオード (LED)
など多くの種類がありますが、最も身近なものは液晶でしょうか。その液晶の次世代ディスプレイといわれているのが有機EL。まだまだ発展途上です。
ちなみに上の表示機の括弧中のローマ字は英語の略語です。3文字ばかりですが、有機ELは「OLED」です(Organic Light Emitting Diodeの略)。LEDやLCDと混同しがちですが別物です。よく耳にするTFTやSTNなどは液晶の一種です。
車に適した表示器
表示器には各々に特長と弱点があり、仕様用途も様々です。それぞれの表示器が日々進化し続けていますし、一概にどれが良い、どれが悪いということではありません。使う環境や条件、要求されるスペック(仕様)に合わせて採用される表示器は異なります。
その中で、車のメーターやオーディオに使われている表示器の多くは液晶と蛍光表示管です。Defi製品においても、ヘッドアップディスプレイ(フロントガラスに虚像を映し出す方式)のVSD用表示器には蛍光表示管が採用されています。
液晶と蛍光表示管が多く使われている大きな理由として、次のような点が挙げられます。
1.車載環境の温度要件を満たしている
温度要件とは、「この温度の範囲内では正常に動作しなければならない」という条件です。
車載環境は家電製品の環境に比べ非常に過酷です。例えば、真夏の炎天下の車内の温度を想像してみてください。インパネ表面温度はなんと100℃を超えます。逆に真冬の車室内は氷点下になります。車載表示器はそれに耐えることができなくてはなりません。
2.車載環境下で寿命が長い
車載表示器は、1のような過酷な環境の中でも寿命が長くなくてはなりません。液晶と蛍光表示管は、厳しい車載環境下で使用した場合の寿命を長く保つことが可能なため、車載表示器に適しています。10年経っても現役で走っている車はたくさんありますよね。
恐るべし!車載部品たちです。
液晶、蛍光表示管ではなくなぜ有機EL?
上述の内容から、液晶と蛍光表示管が車載にふさわしいことがわかります。ではなぜ、Defiのディスプレイに実績のある液晶や蛍光表示管ではなく、有機ELを採用したのでしょうか。
まず、有機ELが先に述べた車載環境の温度要件と寿命の2つの条件を満たしていることが挙げられます。当然それだけではありません。次世代と言われる理由を3種類の表示器を比較して見てみましょう。
比較項目 | 有機EL | 液晶 | 蛍光表示管 |
車載スペック | ○ | ○ | ○ |
必須条件。温度要件と寿命を満たしていること。 | |||
発光の種類 | ○自発光 | △バックライト | ○自発光 |
自発光だとバックライトが不要なため、そのスペース分製品を薄くできる。 | |||
輝度 | ○ | ○バックライトによる | ◎ |
表示の明るさ。輝度が高いほど、まわりが明るくても表示が見やすい。 | |||
表示の精細さ・解像度 |
◎ | ◎ | △ |
ドットが細かいほど表示が滑らかになる。細かい表示も可能となる。 | |||
コントラスト | ◎ | △ | ○ |
白と黒の輝度の差。コントラストが高いほど、表示が鮮明になる。 | |||
抑ウォッシュアウト | ◎ | ○ | △ |
ウォッシュアウト=擬似点灯。太陽光などがあたることで本来点灯しない部分が点灯しているように見えたりすること。 | |||
視野角 | ◎ | △ | ○ |
ある一定以上のコントラストで表示できる角度。表示の中央正面を基準に、上下左右のどの角度まで表示が見えるかをあらわしたもの。 | |||
応答性 | ◎ | △ | ◎ |
表示の信号を受信してから、実際に表示されるまでの速さ。 | |||
消費電力 | ◎ | ◎ | △ |
環境 | ○有機物 | △ | △ |
見栄え比較 | 有機EL | 液晶 | 蛍光表示管 |
日中 正面から |
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3種類とも表示ははっきりと見えますが、コントラストが一番良いのは有機ELですね。 | |||
日中 斜めから |
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有機ELは視野角が広いので、斜めからでも遜色なく表示が見えます。 | |||
夜間 正面から |
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有機ELのOFFの部分(点灯していない黒い部分)が真っ黒です。 | |||
夜間 斜めから |
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やはり有機ELの視野角が広いことがよくわかります。 | |||
日中 直射日光想定 |
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春から夏にかけて一番太陽が高い位置にあるときの、直射日光を受けた場合を想定しました。蛍光表示管の表示は読み取ることが難しいですが、有機ELは読み取り可能です。 |
- ※蛍光表示管の画像は、ヘッドアップディスプレイ用の表示器のため、実際の表示に対し反転しています。
- ※使用している画像は、擬似的に状況を作って撮影したものなので、実際の状況下での見栄えとは異なることがあります。
- ※弊社で製造した表示器サンプルを使用しています。表示器の性能や表示内容はこの限りではありません。
- ※比較内容は車載用の表示器を車載環境下で比較した場合であり、家電や民生用の表示器を比較した場合や、車載環境とは異なる環境で使用する場合は結果が異なることがあります。
「表示の綺麗さ」は色の付いている部分にばかり目が行きがちですが、このように単色の表示器では、色の付いている部分と付いていない(黒い)部分の差がはっきりとしていること、黒い部分がより真っ黒であることが大きく影響しています。
モータースポーツの表示器は、常に屋外にあること、瞬時に表示を読み取る必要があることなどから、厳しい条件をクリアしなければなりませんが、有機ELがそれらをクリアする最適な表示器いうことがおわかりいただけましたでしょうか。日本精機ではこの車載用の有機ELを自社生産しています。
Defiでは自社製の有機ELを初めて採用したDefi-Link Displayを2002年4月に発売しました(2010年生産終了)。当時、車載用の表示器という分野では、有機ELを採用したもの自体が業界初でした。
Defi-Link Display (2002-2010)
その他に有機ELを採用した製品ではSuper Sports ClusterがADVANCE ZDがあります。(どちらとも生産終了)
ADVANCE ZD (2010- 2021)